相対音感とは、ある基準の音に対してほかの音が高いか低いかを判断する能力のことを言います。
「それぐらいなら私でも」と思われるかもしれません。
確かに誰もが「どちらの音が高いか?」程度の判断能力はありますが、
相対音感を持つ方は、それが複数音に対して的確に判断する能力を持っています。
対して、絶対音感とは、簡単に言うと音を聞いただけで音の高低、音階を的確に判断できる能力のことを言います。
相対音感との決定的な違いは、相対音感が音を判断する時に基準の音を必要とするのに対し、
絶対音感は基準とする音がなくとも記憶に基づいてあらゆる音を的確に判断できるということです。
「絶対音感」があっても歌が上手いとは限らない?
その絶対音感、もしくはそれに近い音感能力を持つ3人の生徒さんが、
この間のボイストレーニングのレッスンで
「適当な声や音を聞き分けると感動されるのに、カラオケに行くと、
歌は言うほどうまくないんだねって言われる」という話で盛り上がっていました。
多くの方が誤解しているのですが、音感の能力と発声する能力は全く別のもので、
絶対音感を持つ方でも、聞いた音を正しく発生できるとは限らないのです。
ですので、歌のサビの一番の高音が”A4(真ん中のラ)”だと的確に聞き分けることができても、
その高い音を発することができない。絶対音感を持っていても、
歌うと音をはずしまくってしまうことは、多々あることなのです。
「絶対音感」があると音を外しているのがわかって上手く歌う気力がなくなる?
第一、絶対音感を持っていて、完璧に歌を歌うことができるのならば、
ボイストレーニングの必要なんてありませんよね。
また、「絶対音感を持っているのに音痴な人もいるんだ」と思った方もいるかもしれませんが、これもまた誤解です。
音痴である場合、自分が音をはずしてしまっていることにすら気づくことができません。
つまり、カラオケで「私音痴だから、あんまり歌いたくない」という方がいると思いますが、
その方も実は音痴ではないということです。
では、絶対音感を持つ方とそうでない方の音痴で何が違うのか。
絶対音感を持たない方は「あ、今の音はずしちゃった」とか
「ちょっと低かったかな?」というところを、絶対音感を持っている方は
「今、ドを出したかったのに、ミが出ちゃった」と自分がどれだけ音を外して、
どの音を出したかを確実に判断できるのです。
「絶対音感」が歌上達に圧倒的有利ということはない
ボイストレーニングをするうえで絶対音感があれば有利ではあるかもしれませんが、
ないからといってデメリットではありません。
そもそも、絶対音感を養うには幼少期に楽器や音に触れるなどのトレーニングを必要とするので、
今から身に着けるのは到底無理だと言えます。
「相対音感」であれば練習によって身に着けることが出来る
ただし、相対音感は年齢にかかわらず、思い立ったが吉日で
トレーニングを重ねれば誰にでも身に着けることのできる能力です。
トレーニングと言っても、あまり難しく考える必要はありません。
例えば、ピアノなどで初めのドを確認したら、
ドレミファソラシドを歌ってオクターブ上のドに来た時にピアノで音を確認してみましょう。
これを毎日十分程度繰り返すというのも有効なトレーニング方法の一つです。
実際、生徒さんの中には私よりも圧倒的に優れた音感を持っておられる方が大勢います。
音感があれば音楽の楽しみ方も増えますし、本当にうらやましいと思います。